バレエという踊りの特質として、「重力からの解放」が挙げられます。いろいろな
ダンスがある中で、バレエほど体重を感じさせない、軽やかさが要求される踊りは
ありません。皆さんもご存じのとおり、バレリーナはトウシューズ(ポアント)で
踊りますが、ポアントの技術は極限までの身体の引き上げによって初めて可能にな
ります。まさに人間の肉体を超越した次元だともいえるのです。そして軽やかな空
中で浮いているかのように見える跳躍、軸のまっすぐな鮮やかな回転は観客を異次
元へと連れていきます。バレエの特徴的な技術である、ポアント、跳躍、回転は3
次元で肉体に縛られている人間を多次元世界へ解放させるという要素を含んでいる
ようにも思えます。実際、バレエで表現されるものは妖精や白鳥など人間以外のも
のが多くあります。バレエ以外でも、たとえば機械体操、新体操やアクロバット的
な運動など、技術的に似た要素を持つものはありますが、バレエにおいては身体は
おおむね垂直に保たれていることが多く、まっすぐな軸が通った身体をキープする
ことが重要になってきます。まっすぐに地に足をついてグラウンディングした姿勢
で動くこともバレエの特徴です。頭をさかさまにして跳んだり回転したりは特別な
振り付けを除いては、基本的にはあまりないことです。頭のてっぺんから足の裏ま
でまっすぐに身体の中心を通った軸は他の次元のエネルギーとつながる基本の姿勢
でもあります。こうしたことから、このバレエという踊りは、人間が3次元に肉体
を持って存在しながらも同時に多次元にも存在していることを示唆するものである
といえるのです。