バレエのレッスンの素晴らしいところは、単なる肉体訓練ではないというと
ころです。スポーツのように運動する楽しさももちろんあるのですがバレエ
のクラスレッスンは、バレエダンサーが毎日基礎訓練として行うもので、静か
で緩やかな動きから徐々に激しく大きな動きへと移っていくように構成されおり、
このレッスンをこなすことで、バレエを踊るのに必要な身体を作っていきます。
レッスンは必ずピアノによる音楽で行われます。バレエにおける動き、ステップ
は音楽と不可分のもので、動きと音楽の一体化によって初めてバレエという
ダンスは芸術として完成するのです。一流のダンサーはみな優れた音楽性を持
っています。音楽性は必ずしも練習したからといって得られるものではありませ
ん。踊る際の音楽性とはリズム感が優れているということのみならず、旋律や
強弱や楽器の音色等、その音楽の持つ内容すべて、作曲家が何を考えて作っ
たのかを瞬時に理解して筋肉に伝達できる 、というところまでを含むものです。
そのように深く音楽をキャッチすることが舞台上での表現につながるのです。
心に響いたものしか、表現することはできません。うわべだけ取りつくろった
ものは偽物の表現です。バレエ音楽をはじめその他の舞台で踊られる音楽は
クラシックの偉大な作曲家の作ったものが多いのですが、その偉大さに匹敵す
るような踊りにはなかなかお目にかかれません。バレエダンサーは音楽性を養
うために日ごろからレッスンで優れた音楽で訓練することが必要なのです。